アイナメのつぶやき

釣り
松下公園から見た釜の前堤防
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釜の前、アイナメ釣の記憶

 

あの大津波の日以来、堤防から釣り人が消えて、そろそろ早9年が過ぎようとしている。

 

私は(鮎斗君のお父さん)ホームグランドにしている松下海岸の堤防(通称釜の前)では一年を通して35センチを超える良型のアイナメを数多く釣っていた。

松下公園から見た釜の前堤防

 

私の仕掛けスタイルは、1メートルちょっとの八洲(やしま)調子のヘチ竿(カーボンロッド)に、3号の道糸を木製太鼓リールに50メートル巻いて、1号~1.5号のハリスを1ヒロほど取ってブラッドノットで道糸につなぐ。針はチヌ3号か海津13号を外掛け結びでハリスに結びその上に2B~3Bのガン玉を噛み潰すのが通常だった。

 

餌は「生まぜ」か「シューリ下」をチョン掛けにして堤防際水面から底までを、落とし込んで探り、底についても当りがなければ仕掛けを上げて、2,3歩あるいてまた落とし込んで堤防の先端までを探り歩く「探り釣り」だった。

 

 

生餌は大抵、行きつけの釣具店で1パック500円程度で買っていたけど、大潮の干潮時にはよく餌取りもした。

 

釜の前堤防内側付け根近くの波打ち際付近には四角テトラが点在して砂に埋れていて、満潮時には完全にテトラ全体が水没している。干潮時は水面から顔を出したテトラの裏側に”まぜ(エラコ)”が密生して張り付いている。また、そのテトラには全体にシューリ貝(カラス貝・ムラサキイガイ)も密生して張り付いていて、テトラの角に張り付いている部分は海底の砂を巻き込んで”ふわふわ”している部分があるから、そこをほじくるとかなり高い確率で”シューリ下”という岩イソメに似た虫が取れる。普通のイソメは柔らかいので餌取りに嚙じられるとすぐにちぎれてしまうが、シューリ下は体全体が鎧を着たように硬いので、餌持ちがいいのが特徴だ。

 

釜の前堤防は人気の釣り場で、日曜日などは堤防全体に大勢の釣り人が上がって、思い思いに釣を楽しんでいた。堤防に上がると左側は外洋に面していて波が荒いので全体に巨大なテトラポッドがびっしりと埋め込まれているので、ウキ釣りでタナゴやクロダイを狙う人が多く、又投釣りの人も多くいた。そして、右側は湾内に面して波が無くテトラも無いのでヘチ釣りには絶好のポイントが多く点在していた。

 

また堤防内側は波も無く静かなので、家族連れなども多く投竿を置き竿にしてピクニック状態になっているポイントも多かった。そんな中で、ヘチ釣りは上級者の釣り方だったようで、ヘチ釣りの釣り人は少なかった。置き竿の合間を縫ってヘチを落とし込んで行くと中層で食ってくる事もあったが、多くは底について餌を引き上げようとした瞬間に、グッと竿先を抑え込むような当りを感じる。「大物の当たりだ!!」。魚が小さいときは”抑え込む”当たりでは無く「ブルブルッと」小刻みに震える当たりが多いから、この抑え込むような当たりが大物だと区別がつくのだ。

 

次の瞬間、その竿先をほんのわずか、魚との間合いを聞くように引き上げると、さらに今度は竿先を”グッと”しかし静かに引き込む。ここで竿全体を大きく瞬時に引き上げて”合わせ”る。「掛けた!!」。竿全体が大きく湾曲して魚との引き合いが始まる。魚が針を外そうと頭を振り、巨体をくねらせる様子がカーボン竿の繊維を通して、竿を握る手のひらに伝わってくる。置き竿にして日がなのんびりしている家族連れが足元で大きく湾曲する竿を見て驚いている様子を尻目に、更に”ヘッヘッヘ”という優越感を味わうことができる瞬間でもある。

 

釣り上がってくる大物アイナメが水面に魚体をくねらせている所をスルスルと伸ばした玉網ですくい上げる。玉網が水面から堤防の上にあがると、そのアイナメは4,5メートル上から見ていたより一周りは大きい。まるまると太った魚体は「ビール瓶」の呼び名に相応しい巨体だ。

 

そばで見ていた家族連れが「こんなに近くの足元に、こんな大きなアイナメがいるんだ!!」の驚きの声が聞こえる。”どんなもんだい…”とドヤ顔でクーラーボックスにしまい込む。このヘチ釣りの醍醐味を一度でも味わってしまうともう、釣は辞められません。

 

そんな私の釣ライフを、あの忌まわしい原発事故が奪い去って、早9年。今も、釜の前堤防には誰一人として人の姿は確認できない。あの大津波の日以来、堤防に上がれないように鉄柵が張り巡らさてているからなおのことだ。テレビのニュースでは原発事故以来続いていた福島県沖海産物の出荷制限が全面的に解除されたと報じていた。

 

週4回の透析生活になってしまった今 ”もう叶わないのか?”。あの大好きだった釣はもうできないのかと思うと”悲しい”。

 

釜の前堤防にいるアイナメたちは何を思っているのだろう…。

”釣り人がいなくなって平和になったなあ…”とでも言っているだろうか。

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