鮎斗君の夏休み2019年 ゲーム三昧の日々。料理の達人か!焼き肉ライスでお腹いっぱいになったら一日の始まりだ。

鮎斗君
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今年も鮎斗君の夏休みが始まった。

 

外は連日35度の猛暑が続いている。鮎斗君は普段、障がい者支援施設に通園している。そのため8時には家を出るから逆算してお父さんは7時半ごろになると鮎斗君を起こします。起こさなければいつまでもベッドから起きてこないから、強制的に起こします。でも、夏休みに入るとお父さんが起こさないので、連日10時になってもベッドから出てきません。

 

お母さんは、透析治療のお父さんに変わって家の経済を支えています。今は30km先の病院の給食施設で働いている。早朝の早番勤務があるので4時半には家を出る。お父さんは2階で一人で寝ているが、お母さんと鮎斗君は1階で寝ているから、お母さんが仕事に行ってしまうと、鮎斗君が一人になってしまう。鮎斗君は生活のすべてにおいて介助が必要なので、お母さんの出勤時間に合わせて、お父さんが2階から降りてお母さんと交代して鮎斗君を見守っている。こんなパターンの生活がもう何年も続いている。

 

お母さんが家を出ると、ソファーに腰掛けて鮎斗君の寝顔を見ながらコーヒーを飲むのが日課だ。お父さんは今日は2日連続で透析が無いスケジュールだから、鮎斗君を強制的に起こさない分ゆっくり出来る。いつもなら、起こして施設まで車で送り出すのだけど、夏休みが始まると一日中鮎斗君と一緒に過ごすのだ。鮎斗君が起きると、怒涛の一日が始まるので、鮎斗君が自分で起きるまでのここからの時間が、お父さんのためだけの至福の時間となっている。

 

鮎斗君の朝食風景

 

10時半になってやっと鮎斗君が起きてくる。起きる早々、遅めの朝食の準備だ。まず、冷蔵庫から焼肉用の豚肉スライスと焼き肉のたれを抱えてお父さんに手渡す。調味料棚から醤油とみりんを取り出してレンジのわきに置く。今度は生姜とおろし金を準備する。次に食器棚からお皿を3枚取り出してカウンターに並べた。更に切り餅の入った袋ときな粉、砂糖の入れ物をお父さんに手渡す。1枚目の皿は焼肉用、2枚目はもち用、3枚目は多分つけダレ用だと思った。

 

鮎斗君は自分の食べたいものの味付けや調理法をよく知っている。いつもお父さんやお母さんが料理している様子を見ていて記憶しているようだ。焼き肉なら、それに使う調味料やフライパン、菜箸などもセットして、「さあ、俺の食べたいものわかるよな、あとは頼むぞ」とでも言っているかのようにその料理に関する全ての準備を怠らないのだ。言葉で伝えれば「俺は生姜焼きが食べたい」で済んでしまうところだが、一連の動作や行動はそれをお父さんに伝えるための鮎斗君の言葉なのだ。

 

お父さんは切り餅を2個丼に入れて被るくらいの湯を注いで電子レンジに3分かける。その間にフライパンで豚肉を焼いて皿に盛る。別の空いた皿に焼き肉のタレを注いでおく。鮎斗君は納得すると肉を器用に丸めてタレに付けて頬張る。その間に柔らかくなった切り餅を取り出して皿の上に一個を4等分にちぎって、同割にしたきな粉と砂糖を混ぜてかける。肉はあっという間に食べ終わり、続いてもちを食べ始める。すべて鮎斗君の思ったとおりに出来て満足げだ。最後にお薬を飲む。向精神薬をジュースに溶かして飲ませる。薬は非常に苦い薬なので2杯目のジュースで喉に張り付いた苦みをおし流すように飲み干す。さて、腹ごしらえは終わって鮎斗君の一日が始まる。

 

鮎斗君の生き方

 

ゲームのはじまり

 

 

鮎斗君のベッドの横の壁際にDIYで作った棚があってそこに23インチのテレビをゲームのモニター用に置いてある。その横には古いプレステとスーファミが並んでいてそれらに接続した切替機とコントローラーが置いてある。鮎斗君はベッドにあぐらをかくように座るとゲームの準備だ。所定の位置にコントローラーを配置してお気に入りのストリートファイターのカセットをセットする。スーファミはもう何年も使っているのでカセットの接触があまり良くない。カセットの微妙な差し込み具合で接続を器用に調節している。上手く接続が完了するとお父さんに裏モードにするようコントローラーを手渡した。

 

以前、お兄ちゃんがゲームで遊んでくれた時、お兄ちゃんが裏モードにする技をやっていたのを覚えていて、お父さんにもそれをやって欲しいのだ。ゲームのスタート場面でコントローラのボタンを操作して「ピロピロピー」と裏モードのサイン音が鳴ったら後はお父さんはお役御免だ。鮎斗君はゲームをすると言っても、鮎斗君自身がコントローラを通してゲームのキャラクターを動かすことはできないので、お兄ちゃんや、お父さんが操作するのを見ているだけだ。「ストⅡ」は数人のキャラクタがいてそれぞれが対戦してバトルを繰り広げる格闘ゲームだ。

 

まず最初にキャラクターを選択するところだけは鮎斗君が操作します。その後のキャラのバトルの画面になるとあとは、お父さんが操作してキャラを対戦させ勝ち上がっていく様子を見ているのが鮎斗君のゲームなんです。一通りキャラの対戦が終了すると後は、お父さんは今度こそお役御免になる。その後は、オートで繰り返されるデモプレイの画面を見ているだけだ。この繰り返されるデモプレイを延々と見ていることがゲームをしているということなんです。

 

買い物へ行こう

 

ゲームは2時間、3時間と長時間続くときと、ほんの1、2分で終わるときもある。先の見通しで自分が好きな事、興味がある事があり、そっちに気が向いてしまうと早く終わる傾向がある。

 

ゲームが終わると次の行動は「買い物」だ。普段は自分から着替えをしないが、この時ばかりは自分で着替えをする。大抵はお母さんが着替えを準備しておくのでそれを引っ張り出して着替えを始める。着替えが終わると、すぐに車に乗り込んでシートベルトを締めたら買い物に行く準備は完了だ。

 

お父さんは車を走らせるが、まっすぐ買い物店にはいかない。お父さんは買い物用、散歩用に何通りかパターンを用意している。鮎斗君がその先の見通しを付けられるようにするためだ。この時間帯、この場所を通れば、ここに行く、ここに行けば何がある、かにがあると見通しがつけば鮎斗君の気持ちが安定して落ち着いて行動できるのからだ。

 

以前は三崎公園を2時間かける小名浜コースを回っていてたが、最近は平市内を一回りする30分コース日ている。今回はスーパーマルト行くことにした。車で直行すれは5分とかからないが、わざと遠回りするのは、鮎斗君の気持ちを落ち着かせるためだ。定期的なコースを通ることでこの先何が起こるのか見通しを付けやすくする効果があると思う。

 

スーパーに着いて店内に入ると、店内用のプラスチック製のカゴをもって目当ての商品を探します。お父さんは鮎斗君が持つカゴの端を後ろからつかんで速足の鮎斗君が暴走しないよう、制するように押さえます。お父さんは、持病の喘息で呼吸困難があるから、鮎斗君のように速足では歩けないので鮎斗君をゆっくり歩かせる為でもあるのです。

 

まずは、店内の商品棚の間を縫ってぐるぐる歩き回ります。商品を手には取らずに店内中を何周もします。目当ての商品がどこにあるのか確認しているようです。何度も何度も回るのでお父さんは疲れてしまい、「もうおしまいだよ!」と声を掛けます。すると鮎斗君はやっとお目当ての商品をカゴに入れ始めます。お目当ての最初はいつも魚コーナーでカツオです。そのあとは大好きなお総菜コーナーで焼売、や酢豚などを選ぶと次は肉コーナーに行って焼肉用のスライス肉を選びます。たまに、牛のステーキ肉を選ぶけど、1,000円以上するので、一旦は「だめ!」と言うと、鮎斗君は仕方なしに棚に戻します。それでもどうしても欲しがるときもあるので、鮎斗君の落ち着き具合を見ながら買う時もあります。(以前は欲しがるのを強く制してしまって、パニックに陥り店内中を大暴れしてしまう事もあったが、今はそのようなパニックは殆ど起こさなくなった)

 

 

一通り目当ての商品を買い終わると店内に併設されている100円ショップに行き、これもお気に入りの駄菓子を買います。そのあと更に、これも併設の和菓子店に立ち寄り、大好きな最中を二つ買います。最後に駐車場へ向かう途中の自販機で缶コーヒーを一本買って車に乗って、鮎斗君の買い物が終了です。

お風呂に入ろう

 

買い物が終わって帰宅するともう夕方です。買ってきたものを全部カウンターの上に並べたら、遅いお昼と少し早い夕食を兼ねて食事がはじまります。一通り買ったものを食べてお腹いっぱいになると、満足気にソファーに横になります。

 

鮎斗君の一日の締めくくりの最後はお風呂です。でもその前におまじないのようにもう一度ゲームが始まります。でも最後のゲームではお父さんの出番はありません。鮎斗君が一人で「ストⅡ」のデモプレーをほんの数分だけやります。これは、お風呂に入るための事前儀式のようなものです。

 

鮎斗君はお風呂が大好きです。小さいころから水が大好きで道路の水たまりにもダイブしたり、また海に連れて行くと波打ち際によせる小さな泡を手に取り何時間でも居続けるほどでした。お風呂に波打ち際の泡を再現するかのようにシャンプー液を入れて、泡まみれになっていたこともあります。

 

鮎斗君は自分自身で体を洗うことはできないので、お父さんが一緒に入って洗ってやります。洗い終わって湯船につかって、放っておくと、水を入れ続けて水風呂にしてしまうので「上がりなさい!」と声をかけるのです。お風呂から上がると、後はビデオで魔女の宅急便を見ながらベッドに入ります。こうして鮎斗君の一日が終わってゆきます。そして明日も同じパターンが繰り返されるのでしょう。

 

鮎斗君にとって、このパターンこそが自身が安定した毎日を生きるための言葉であり鮎斗君自身なのだと思っているのです。

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