鮎斗君と歩いた散歩道 冷たい視線にさらされても、心優しい言葉に救われながらあるき続けた20年の年月

鮎斗君
鮎斗君とお父さんのドライブ散歩
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鮎斗君はお散歩が大好き。お母さんの手助けも兼ねて

 

鮎斗君は小さころからとにかく家にじっとしていることが出来ず外に出ていました。大抵は車に乗ってドライブです。大抵は2km先の工業団地にある公園へ行くのですが、まっすぐ行くと5分も立たずについてしまうので、町中の信号の多い道路を選んで遠回りして1時間コースで行きます。公園に着くと駐車場にあるジュースを買って飲むのが恒例になっていました。鮎斗君は行動をパターン化します。一つ目的地を設定したらいつも同じコースで行きます、そのコースを通って違う目的地に行くと不安になりパニックを起こしやすくなります。鮎斗君の頭の中では”このコースならあそこだな”と見通しを付けているのだ。

 

お父さんが休みの日は鮎斗君が行きたいところに行けるよう、時間をかけて散歩に行くことにしていました。会社に行っているときはお母さんが付きっきりで鮎斗君を見ているからお母さんのストレスを減らすためにもできるだけ長い時間をかけるようにしていました。

 

朝起きると、その日は学校に行かなくていい日だとわかっているようで、9時頃になるとすぐに家を飛び出します。外に出てもその日は車には乗りません。今日は歩いて散歩に行くのだとわかったいた。お父さんが手を差し出すとしっかりと握りかえして出発です。鮎斗君は歩くのが早くて追いつくのが大変だ、なかなか追いつかず10メートルくらい離れると「ストップ」と声をかけます。スット立ち止まり、お父さんが追いつくのを待ってくれます。

 

浴びせられる冷たい視線

 

そんな二人の散歩は、車で通り過ぎる人たちの目にはどのように写っているのか、歩く方向と対向して来る車が通り過ぎる間際、その同乗者たちが浴びせる”好奇”の目には、毎度のことでなれているとは言え、「障害者がそんなに珍しいのか!!!?」と憤りを隠せないときもしばしばでした。いつも車のいない河川敷を歩くのが心が休まる一時でもありました。町の真ん中には川が流れていてその河川敷には遊歩道が整備されていたのでそこを歩くのが好きでした。目的地は「いわき公園」にあるショッピングセンターでの買い物です。よく車でいわき公園に行ったときの帰りにそのショッピングセンターで買い物したのを覚えていて、そこに行くのが一つのコースになり目的地になったようです。最終的な目標が定まって見通しが着くとパニックを起こすことなくスムーズに行動することが出来るのです。

 

大好きな、お買い物は散歩の一つの目的

 

目的地へは約12kmの道のりがあり、3時間ほどかけて途中休み休み歩きます。コースの決まった場所にある自販機でシュースを買うのも目的の一つです。自販機の前に座り込んで休憩するとまた歩き出します。相変わらず歩くのが早く、ズンズン、ズンズン、黙々とあるき続けます。途中コンビニによってお昼ご飯を買います。スパゲティーや納豆巻き、アイスやポテチやジュースも買います。そこから2km位のところのに少し大きな公園があってそこの芝生に備えられた木製テーブルにで、お昼を食べます。もうすでに10kmくらいは歩いているので夏でなくても汗でグッショリになりながらお昼を食べます。食べ終わって一息つく暇もなくすぐに歩き始めます。そこからはもうあと1kmくらいで最終目的地に着きます。スーパーに着くと自分の好きなおやつをしこたま買います。

 

この頃は同じものを4個づつ買うのが普通のことでした。8個づつのときもありました。ガム4個、ポテチ4個、カツオ刺し身4パック、ウインナー4パック、等などですから一回の買い物で8,000円ほど買うときもあるので、最低でも1万円は持っていないと安心できません。あまりに高額な商品を欲しがる場合はお父さんが立ちふさがって「だめっ!」と制します。一旦買うとなれば何が何でも買うんだと、しばらくお父さんと押し問答状態になります。時にはパニックをおこして店内で大騒ぎして暴れることも度々です。一度パニックを起こすともう手がつけられません、落ち着くまでじっと待つしかありません。店の人に事情を説明して謝ることもありました。大声の唸り声をだしたり、かん高い鳴き声で叫んだりしますから、近くを通り過ぎる他の買い物客の刺すような冷たい視線を感じながらも、ただひたすら落ち着くのをまつしかありませんでした。

 

心優しい人もいるんです

 

「なにかおてつだいしましょうか?」と声をかけてくれる人もたまにはいますが、そんな優しい言葉をかけられると、それまで気丈に振る舞っていた自分も一気に緊張が解けて思わず涙が溢れてしまうそんな嬉しいこともありました。振り返ってみるとそんなことはそれ一回だけでしたね。まだまだ、障がい児、障がい者に対する心ない言動や視線は止まないものです。

 

それでもある程度時間が経つと、さっきまで大騒ぎしていたのが嘘のように何事も無かったかのように落ち着きを取り戻して、すんなりと店を出て行くのです。そして帰り道も同じコースで歩きながら帰ります。時々休憩しながらスーパーで買ったおやつを食べながら歩きますから家に着く頃には買った荷物は半分ぐらい無くなってしまいます。そんなこんなで夕方5時くらいに家に着くと一安心です。

 

そんな辛いことの多い散歩は平成10年頃から平成20年頃くらいまで続けられました。お父さんも慢性腎不全になり、更に慢性閉塞性肺疾患を患い、ほんの短い距離でさえ呼吸困難に陥る様になり徐々に散歩は続けられなくなりました。透析治療が開始されてからは完全に散歩は中止され、もっぱら自動車での2時間コースドライブが精一杯となってしまいました。でも10年近く続いた散歩で学習した鮎斗くんは最近では買い物にでかけても商品を大量に買うこともなく又、パニックを起こすこともなくなりました。年齢とともに少しづつでも成長しているんだなあと実感できるようになりました。人は皆同じでは無い、それぞれの個性を尊重して、障がい児や障がい者が普通の人間として健常な人たちの中で生きて行ける日が早く来ることを願ってやみません。

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