棚卸し(インベントリー)の重要性を知る
棚卸しとは、実施献立のレシピに基づいて発注され納品された食材がある時点でどのくらい在庫になっているかを金額に換算して調べる作業だ。
単純に、一定期間で仕入れ合計金額から棚卸しの合計金額を差し引けば、提供料理に使用した原材料の正味金額がわかる。
NET.原材料費がわかれば、目標(予算)に対する実績の達成度がわかる。達成度が未達成ならオペレーションの修正が出来る。
事業所の業績管理では、予算、対実績の達成度を測ることは必要不可欠な重要作業だ。
棚卸しをしないというメリットとリスク
会社によっては、事業所の食材在庫は認めないという会社もある。
在庫を認めないとは、定めた期間末日の原材料費はゼロ、つまり使用する分だけ仕入れし、その食材は全て使用して残らないという考え方だ。
見方によっては、非常に単純で合理的である。なにしろ棚卸しに費やされる時間と、経費が節約出来る。(実際、「棚卸しって結構時間もかかるし大変な作業だよね!通常営業が終わってからだから、残業だし!」と言う意見も多い)会社側から見れば、事業所で在庫を持たないという事は大きなメリットになる。
全国規模の会社なら1事業所に10万円の在庫でも、100事業所あれば一千万円の利益が眠っていることになるからだ。
しかし、その考え方には大きなリスクがあると思う。
実際の事業所運営において、期間末で在庫がないと言うことはありえない。何万円かは必ずある。
食材がないと言うことは、全ての食材が当日納品され、下処理され、仕込みされ調理されるということで、それはほとんど不可能といえる。
つまり、在庫はあってもないことにすると言うことだ。この事は不正の温床になる事を会社が認めてしまうことになる。
例えば、期間末日に仕入れした米の伝票の日付をその翌日に付け替えして納品させるなど業者さんにも負担を強いることになる。
何より正確な対予算達成度が測れないから、おおよそこんなものだろう的ないい加減なオペレーションになり、レシピを作成する段階で不必要にコストを低く設定したり、不適正な人員構成で人件費を調整したり、本当に必要な食材や器具等の経費をケチったりと、あらゆる方向で好ましくないオペレーションが実行されてしまうのだ。
食材を隠す行為はエスカレートすると、事業所から食材を持ち出し、横流し、等個人的な利益にしたりする不正にもつながってしまう恐れが高い。
毎週末棚卸しで業績管理を実行
筆者が勤めた会社では、年間予算に対して、毎週末の棚卸しが行われていた。月に4回、毎週だからそれはもう大変だった。
予算に対する達成度を会社事業部へ毎週末に週報を報告、月末に週報を合計した月報を報告するシステムだった。
年間予算を達成するために、月々の予算を達成することが重要であり、月の達成を確かなものにするためには、週毎の達成度を測り、悪ければ翌週で改善するというプロセスが必要なのだ。
他の事業所の多くの支配人たちは週末の業績管理帳票を会社が定めた翌週の水曜日に報告していた。
結果が悪い場合は、週末まで残り3日間しかなく、オペレーションの修正は難しくなるため、筆者は一日でも早く結果を知るため、週末当日に帳票の集計を終え翼、土曜日には報告を終えるようにしていた。7日間あれば十分修正可能なのだ。
このように、棚卸しをすることの意味は、業績を管理する上で欠かせない重要な仕事なのだ。
でも、普通にやっていたらその作業は気の遠くなるほどの作業量だ。電卓片手に集計して手書きで帳票を書き上げて報告するにはとても長い時間を要する。
PCの技術があれば、特にエクセルを利用するだけでもその作業を軽量化出来るし、マクロが使えれば自動化プログラムを作って更に業務の効率化を進める事が出来る。
腕を磨くということ
事業所責任者の仕事は料理を作って提供するのはもちろん、パートさんの人事管理(勤怠管理、シフト管理など)、職場の衛生管理、厨房機器の保全管理、クライアント担当者との各種折衝、給食会議の報告運営等多岐にわたる。
その上に業績を管理して毎週会社に報告するのだから、時には料理を提供してカスタマーから評価を受けるという本来業務をそっちのけで、報告業務をしなければならない時もある。
しかしそれは本末転倒である。お客様から評価される料理を提供することが出来なければ、当然、業績など上がるはずもないのである。
如何に報告業務を正確に軽量化し、本来の美味しい料理を提供するという業務が出来るかどうかが問われるのだ。PCは苦手だと言う人も是非チャレンジしていただきたい。それが腕を磨くということだ。
下は筆者が使用していた棚卸し集計用のエクセルファイルです。VBAで動作を自動化しています。Alt+F11でプログラムを見ることが出来るので(編集可)参考にされたし。